地域ごとのうどんの違い!ご当地うどんの特徴やレシピをご紹介

日本各地には、それぞれの地域で長い歴史と伝統を持ち、地元の食文化の象徴として親しまれているご当地うどんがあります。
今回は、各地の名物料理として家庭で親しまれているものからお店で提供されているものまで、さまざまなタイプのご当地うどんをご紹介します。

1.地域によるうどんの特徴

日本各地のご当地うどんは、その土地の風土や文化に根付いた特色があります。つゆの色には地域によって違いがあり、関西風は薄め、関東風は濃いめであることは有名ですが、つゆのだしもかつおベース、昆布ベース、イリコ(煮干し)ベース、しょうゆベース、味噌ベースなど地域ごとにさまざま。麺は太さや長さ、硬さ・食感も千差万別です。さらに、つゆの濃さ、量が異なり、トッピングのバリエーションも豊富。冷たいうどんから温かいうどんまで、さまざまなうどんの食べ方が存在します。地域によって違いが出る理由を、だしや麺、食べ方に注目して紐解いていきましょう。

2.代表的なご当地うどん「日本三大うどん」とは?

「日本三大うどん」という表現を耳にしたことがある方もいるかもしれませんが、諸説あり、次の5つが有力候補として選ばれることが多いようです。

<讃岐うどん(香川)(注1)
・特徴: コシの強い麺とシンプルなだしが特徴的な”うどん県” 香川の県民食。麺は太くてしっかりとした食感があり、食べ方はうどんが浸るぐらいたっぷりとだし汁をかけて食べる「かけ」のほか、濃いめのだし汁をかけた「ぶっかけ」、しょうゆをたらした「しょうゆ」、生卵としょうゆをかけた「釜玉」、ゆで汁と一緒に桶に盛った「釜揚げ」など、さまざまです。
・だし/つゆ: 「かけ」で使われるのは、主にイリコ(煮干し)を使ったさっぱりとしただし。中でも伊吹島(いぶきじま)名産のイリコは、上品な風味が楽しめると特に評判です。

<稲庭うどん(秋田)(注2)
・特徴: 秋田南部発祥の手延べ製法で作られる細くて滑らかな喉ごしの干しうどん。平らな細麺で、しっかりしたコシと、つるっとした食感が特徴です。製法や産地が限定されており、それ以外のものは「稲庭うどん」とは名乗れません。
・だし/つゆ:  かつお節などのだしがきいた濃いめのしょうゆつゆや、ごま味噌ベースのつゆをつけて食ベるのが一般的です。

<水沢うどん(群馬)(注3)
・特徴: 小麦粉、塩、水沢の水のみで作られた麺は、純白でコシが強く、つるっとした喉ごしが特徴。群馬県渋川市の水沢地区で発展したうどんで、冷やしてざるうどんとして食べるのが主流です。
・だし/つゆ: 上質な昆布とかつお節でだしをひいたしょうゆつゆと、香ばしさ漂うすりごまを合わせたつゆをつけて味わいます。

<五島うどん(長崎)(注4,5)
・特徴:
長崎県の最西端にある五島列島発祥のうどんで、手延べで作られた細麺。食用の椿油を塗布しながら作られ、ゆでて戻した麺は丸くて細くつるっとした食感です。味にアクセントをつけるために、ネギ、かつお節、しょうゆを入れて溶いた卵に麺を絡めて食べることもあります。
・だし/つゆ: 五島沖で獲れたトビウオのあごだしを使った風味豊かなだしを使います。

<氷見うどん(富山県)(注6)
・特徴:
富山県氷見市で作られる、稲庭うどんに似た製法で作られる手延べうどん。もともとは「糸うどん」と呼ばれていたほど細く、最後まで手で撚ります。ツルツルの食感で喉ごしが良く、手延べの滑らかさと手打ちのコシ、両方を楽しめるのが特徴です。

3.地域に根付くご当地うどんはまだまだある!

ここで紹介しきれないほど、魅力的なご当地うどんが全国各地に存在しています。日本各地で特に有名なご当地うどんをご紹介します。

<味噌煮込みうどん(愛知)(注7,8)
愛知県の味噌煮込みうどんは、「八丁味噌」と呼ばれる濃厚な赤味噌を使った深みのある味わいのスープが特徴です。八丁味噌ならではの深いコクと後を引く酸味を、昆布やかつお節、しいたけ、煮干しなどの和風だしのうま味がしっかりと支えています。麺は、煮込んでいる間に柔らかくなりすぎないようにするため、「ほうとう」などと同じく、小麦粉と水だけで塩は使わずに作られます。具材は、家庭や店舗によって違いますが、油揚げ、鶏肉、かまぼこ、ネギが入り、最後ひと煮立ちさせる前に卵を割り入れるのが一般的な食べ方です。

 

<年明けうどん(香川)(注9)
うどんに赤い食材を添え、年明けに縁起を担いで紅白に彩られたうどんを1月15日までに食べる習慣として、香川県のさぬきうどん振興協議会が新たな麺食行事の普及を目的に始めた取り組みです。新年に食べることで、1年の幸せや健康を願う意味があり、近年は年明けうどんを提供するイベントなどが開催されるなど、広く親しまれています。白いうどんに赤い食材を合わせる紅白の組み合わせは、縁起が良いとされ、見た目にも華やか。赤い食材のトッピングは、梅干しやにんじん、イクラなど自由で、紅いあん餅が入ったうどんなどもあります。

 

<伊勢うどん(三重)(注10)
極太で柔らかい麺に、だしのきいた黒いたれ(つゆ)をかけて食べるのが特徴です。甘辛いしょうゆだれが太い麺に絡みます。伊勢食文化圏では、昔から伸ばす手間をかけずにコシのない太いうどんを作り、これに味噌だまりを絡ませて食べていたそう。伊勢参りが盛んになる江戸時代に、参宮客にいつでも食べられるようにと、ゆで続けた麺にたまりをかけてすぐに食べられる店が出来てきたのがルーツのようです。

<しおかつおうどん(静岡)(注11)
ゆでたて熱々のうどんに、西伊豆の伝統的な保存食「塩鰹(しおかつお)」、ごま、海苔、かつお節と刻みネギをまぶし、隠し味にだししょうゆを少量入れかき混ぜて食べる「汁なしうどん」のような料理。地元では、お酒の後のシメとしても愛されている逸品です。

4.うどんで全国を旅してみよう!

記事では紹介しきれないほど、日本にはたくさんのうどんの種類や食べ方があります。
日本各地で親しまれているうどんは、地域ごとの風土や歴史、その土地の人々の味覚によって多様なスタイルに発展してきました。どれもがそれぞれの魅力を持っています。各地のうどん文化に触れることは、味覚だけでなく、地域の魅力の再発見になるかもしれません。ぜひ日本各地のご当地うどんを楽しんでみてください。

この記事の監修者

藤橋ひとみ

株式会社フードアンドヘルスラボ 代表取締役、管理栄養士。

東京大学大学院医学系研究科修了(医学博士)。すべての人が毎日の食事で 心と体のトラブルを予防・改善できる社会づくりに貢献すべく、コラム執筆、コンサルティング、レシピ開発、メディア出演など幅広く活動中。
HP:https://is-food-health-labo.com/

参考文献:
注1) 農林水産省「『日本全国の麺文化をご紹介!ニッポン麺探訪 第7回 讃岐(さぬき)うどん[香川県]』」(農林水産省)
注2) 農林水産省「『日本全国の麺文化をご紹介!ニッポン麺探訪 第3回 稲庭うどん[秋田県]』」(農林水産省)
注3) 農林水産省「『日本全国の麺文化をご紹介!ニッポン麺探訪 第6回 水沢うどん』」(農林水産省)
注4) 農林水産省「うちの郷土料理『地獄炊き(五島うどん/島原そうめん)長崎県』」(農林水産省)
注5) 五島手延うどん協同組合案内サイト「『五島手延うどん』の特長」(五島手延うどん協同組合)
注6) 【公式】富山県の観光/旅行サイト「とやま観光ナビ」「富山名物の氷見うどん!『冷たい』と『温かい』を食べ比べしてみた結果」((公社)とやま観光推進機構)
注7) 農林水産省「うちの郷土料理『味噌煮込みうどん 愛知県』」(農林水産省)
注8) 農林水産省「『日本全国の麺文化をご紹介!ニッポン麺探訪 第10回 みそ煮込みうどん[愛知県]』」(農林水産省)
注9) 農林水産省「うちの郷土料理『年明けうどん 香川県』」(農林水産省)
注10) 農林水産省「うちの郷土料理『伊勢うどん 三重県』」(農林水産省)
注11) 西伊豆しおかつお研究会「西伊豆しおかつおうどんとは?」(西伊豆しおかつお研究会)

(全て参照:2024.10.30)