乾物でいつもの料理がもっとおいしく!相性ぴったりな組み合わせもご紹介!

日本食(和食)に欠かせない食材「乾物」。乾物は、天日干しなどで食材を乾燥させ、保存性を高めた日本の伝統食材です。

現代のように保存技術が発達していなかった昔、微生物の増殖を抑えるために食品中の水分を減らし、食材を長く保存するために生み出されました(注1)

しかし、乾物の魅力は保存性が高いことだけではありません。
今回は、乾物の魅力や乾物同士を組み合わせる良さについてご紹介します。

1.和食文化の支え。かつお節も乾物のひとつ

日本には自然が育んだ多彩な食材があり、乾物も海産物、野菜、豆など種類が豊富です。

乾物には、日本人の食卓におなじみの、のり、干ししいたけ、高野豆腐など、さまざまなものがありますが、かつお節も魚介の乾物のひとつです。

かつお節は原料であるカツオを煮て燻(いぶ)し、乾燥させて作る乾物です。風味豊かなだしがとれ、煮物や汁物、うどんなど和食のベースとしても欠かせない存在です。

<乾物の種類いろいろ>
乾物は、大きく分けて、海の食材から作る「海の乾物」と山や畑の食材などから作る「里の乾物」があります(注2)

【海の乾物】
のり、昆布、ひじき、わかめ、かつお節、煮干、小海老、寒天など

【里の乾物】
干ししいたけ、きくらげ、切り干し大根、高野豆腐、かんぴょう、春雨、ごま、麩など

2.保存性だけではない!乾物5つの魅力

乾物は常温で数カ月以上の長期保存(未開封)ができ、思い立ったときにすぐに使える便利な食材です(注1)。水分が抜けた分、かさが減るので小スペースで保存することも可能です。

しかし、乾物の魅力はそれだけではなく、さまざまな魅力があります。

1:栄養価が高い
乾物は、生の状態と比べると食材の持つ栄養が凝縮されています。例えば、干ししいたけを水で戻し、生しいたけと同じ重量にして比較すると、食物繊維は約2.4倍、カリウムは約1.9倍、ビタミンDは約14.3倍にもなっています(注3,4)。 

2:メニューにちょい足ししやすい
最近では、スープにそのまま入れられる細切りタイプの高野豆腐など、使いやすいように小さくカットされた乾物も多く市販されています。また、お浸しなどにかつお節や小海老をトッピングするときや「もう少し具材を足したい!」というときにも便利。ご飯や汁物、サラダに加えるだけで、簡単にかさ増しや彩りをよくすることができます。

3:価格が安定している
野菜は、日照不足や長雨、低気温などの生産地の天候や肥料の高騰などにより、価格が変動しやすくなります。
その点、乾物は保存性が高いため比較的価格が安定しており、毎日の献立に取り入れやすい食材です。

4:環境にやさしい
必要な分だけ戻して使える乾物は、料理の過程でゴミが出にくいのも嬉しいポイントです。

5:災害食としても使える
長期保存(未開封)ができる乾物は、備蓄品にぴったりです(注1)。日常的に料理に使って、食べた分をその都度買い足し、常に一定量の食品を備蓄する「ローリングストック」に向いています(注5)

3.かつお節は料理をおいしくする頼もしい味方!

乾物は、乾燥させることで、うま味や風味が凝縮し、乾物ならではの深い味わいが生み出されます。
かつお節の場合、ゆでたカツオを焙乾(いぶして水分をとばすこと)することで適度な酸味のある味わい深いだしが取れ、一方でカビ付けと乾燥を繰り返して仕上げると、うま味が凝縮され酸味がおだやかになり、上品な香りで口当たりの良い、まろやかなだしが取れるようになります。
また、かつおだしは、素材のうま味を引き出し、塩分を控えめにしたいときでもおいしくしてくれる頼もしい味方です。

4.かつお節×乾物で料理をおいしく

乾物同士を組み合わせることで、料理がよりおいしくなります。

特に、和食に欠かせないだし素材である「かつお節」「昆布」「干ししいたけ」は、“三大乾物”と言われ、うま味成分を豊富に含む食材です(注2,6)

これらの乾物は、「かつお節(動物性の食材に多いうま味成分イノシン酸)×昆布(植物性の食材に多いうま味成分グルタミン酸)」や、「干ししいたけ(きのこ類に多いうま味成分グアニル酸)×昆布」など、それぞれ異なるうま味を含む食材を掛け合わせると、相乗効果が生まれ、うま味が強くなることが知られています。

野菜にも昆布と同じ「グルタミン酸」が多く含まれているため(注7)、切り干し大根にかつお節を合わせたり、炊き込みご飯や和え物に混ぜたりするのもおすすめです。

干ししいたけなどを戻した際に出る戻し汁も使えば、うま味成分が溶け出しているため深みが増し、さらに満足感のある料理を味わえます。

5.かつお節に組み合わせたい乾物をピックアップ!

かつお節は、どんな食材とも相性が良く、組み合わせる乾物を変えるだけで、料理のバリエーションが広がります。
のりや昆布、干ししいたけなど、かつお節と組み合わせるとよりおいしくなる食材をご紹介します。

かつお節×のりなら…
パリッと歯切れが良く、豊かな香りがあるのりは、かつお節のうま味と相性バッチリ!
のり巻き:具材にかつお節を使って、うま味が詰まったのり巻きに。
和え物:刻みのりを混ぜた和え物にかつお節もプラス。

かつお節×昆布なら…
うま味を生かして、抜群のおいしさに!
味噌汁:かつお節ととろろ昆布を合わせて、シンプルに味わって。
サラダ:塩昆布とかつお節を使って、塩気の効いたうま味たっぷりのサラダに。

かつお節×干ししいたけなら…
かつお節としいたけのうま味を生かすと、深みのある味わいに。
炊き込みご飯:干ししいたけを入れた炊き込みご飯に、かつお節をトッピング。
煮物:干ししいたけを使った煮物に、かつおだしを合わせて。

かつお節×高野豆腐なら…
高野豆腐から染み出るかつおだしのうま味で、ほっこり心温まる一品に。
煮物:かつおだしを効かせて素材の持ち味を生かした煮物に。
ハンバーグ:高野豆腐で作るハンバーグにかつお節をプラス。

ぜひ、普段の食事に、乾物を取り入れてみてくださいね。栄養とおいしさを兼ね備えた乾物が手軽に食事の質をアップしてくれます。

この記事の監修者

横川仁美

食と健康・美容を繋ぐ「smile I you」代表
管理栄養士×お味噌汁レシピ研究家

管理栄養士を取得後、保健指導や重症化予防、ダイエットサポート、電話相談のカウンセリング等を通して、のべ2000人の方の食のアドバイスに携わる。
現在は、コラム執筆・監修、レシピ作成、オンラインでのダイエットカウンセリングを中心に活動。目の前の人の「今」、そして「これから」を大切にした食の提案を目指している。
HP: https://yokokawa-hitomi.com/

脚注:   
注1) 農林水産省「乾物」
注2) 星名 桂治 (著)『47都道府県・乾物/干物百科』(丸善出版、2017)
注3) 文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
注4) 女子栄養大学調理学研究室 (監)、女子栄養大学短期大学部調理学研究室 (監)『調理のためのベーシックデータ 第6版』(女子栄養出版部,2022)
注5) 農林水産省「災害時に備えた食品ストックガイド」
注6) かがくのとも『しわしわ かんぶつ おいしいよ』(福音館書店,2012)
注7) 日本うま味調味料協会「うま味の成分」
(全て参照 2022.12.05)