2024/10/22
さつまいもの種類と特徴を知って、おいしく楽しもう!
食欲の秋。代表的な秋の味覚として「さつまいも」を思い浮かべる方は多いのではないでしょうか。近年では季節を問わず入手しやすくなっており、スイーツブームや和風回帰の影響から女性や高齢者を中心に消費が拡大しています。身近なところでは、スーパーやコンビニなどの店頭に焼き芋機が増設されるようになりました。
この記事では、そんな「さつまいも」の魅力や選び方、絶品レシピまでご紹介。知識と活用法を極めて「さつまいも」をとことん味わい尽くしましょう。
1.意外と知らないさつまいもの話:歴史、産地と品種、旬
さつまいもは、温暖な気候で水はけが良い土壌を好む植物です。薩摩芋(さつまいも)の他、唐芋(からいも)、甘藷(かんしょ)と日本では複数の名前で呼ばれています。
●さつまいもの歴史と普及
さつまいもはメキシコを中心とする南北アメリカ大陸の熱帯地域生まれで、紀元前800~1000年頃には、ペルーとボリビアを走る山岳地域の中央アンデス地方でさつまいもがつくられていたそうです。コロンブスが15世紀の終わりにアメリカからヨーロッパへ持ち込み、東南アジアへはスペイン人やポルトガル人が持ち込んだ後、中国へと広がっていきました。日本には、1600年頃に中国からやってきたという記録が残っています(注1)。
●どのような品種があるの?
品種は、世界に4000種あるといわれていますが、日本での栽培は40種程度。青果用、加工食品用、アルコール用、でん粉原料用などそれぞれの用途に合わせて、形、皮・肉色、食味などさまざまな特徴を持った品種が栽培されています。流通の大半を占めるのは、皮が紅色で甘くホクホクとした食感が特徴の果用品種「ベニアズマ」や、「高系14号(鳴門金時、五郎島金時など)」。また、最近は「べにはるか」などのねっとり系の品種の人気が拡大しています (注2)。
●代表的な産地は?
さつまいもの代表的な産地は、収穫量順に鹿児島県、茨城県、千葉県、宮崎県の4県。これら4県が、全国の生産量の約8割を担っています。それぞれ特徴があり、鹿児島県は焼酎用及びでん粉原料用の品種をそれぞれ約4割ずつ、茨城県は青果用が多いですが、比較的、加工食品(焼き芋や大学芋、干し芋など)用も多く栽培がされています。千葉県は青果用が中心で、宮崎県は焼酎用が7割近くを占めています(注3)。
●旬の時期
貯蔵技術などの普及により現在では1年を通して出荷されていますが、1年で最もおいしい旬と言える時期は新物が出回る9~11月と、貯蔵物が熟成される1~2月です。収穫時期は初夏から秋口が一般的で、冬から翌年春までは貯蔵されたものが出回りますが、熟成されて甘味が強くなるのが1~2月頃。なお、出荷時期を早めるため、6月頃に収穫する「超早堀り」栽培や、8月頃に収穫する「早堀り」栽培も行われています(注2,3)。
2.さつまいもの栄養面の特徴と選び方
さつまいもには、おいしさだけでなく、健康のために摂りたい栄養素を含むという魅力もあります。
●注目すべき栄養素とその働き
さつまいもに含まれている代表的な栄養素は、食物繊維、ビタミンB6、ビタミンC、ビタミンE、カリウム(注4-6)。それぞれの働きは次の通りです。
食物繊維:腸内環境の改善や生活習慣病の予防に貢献。日本人は不足しがち。
ビタミンB6:アミノ酸代謝の補酵素、正常な免疫機能の維持、健康な皮膚の維持などに重要。
ビタミンC:皮膚や細胞のコラーゲンの合成において必須。抗酸化作用があり、生体内でビタミンEと協力して活性酸素を消去して細胞を保護している。
ビタミンE:強い抗酸化作用を持ち、過酸化脂質の生成を抑制して血管を健康に保つ他、赤血球の破壊を防ぐ作用がある。
カリウム:細胞内液の浸透圧を調節して一定に保つ働きがあり、食塩の摂り過ぎを調節するのに役立つ。 神経の興奮性や筋肉の収縮に関わり、体液のpHバランスを保つ役割も果たしている。
●おいしいさつまいもの選び方
皮の色つやが良く、表皮に傷や凸凹がなくなめらかでハリがあり、ずんぐりとして太く、中央が膨らんでいて形が良いものが良品とされています。極端に細いものや黒い斑点、傷があるものは避けましょう。また、ヒゲ根があるものは繊維が多い傾向があるため、避けた方が良いでしょう。切り口に蜜が出ていたり、黒い蜜の跡があるものは、糖度が高い傾向があります(注3)。
3.実は相性抜群!さつまいも×かつお節
さつまいもには「グルタミン酸」、かつお節には「イノシン酸」といううま味成分が含まれています(注4)。「グルタミン酸」と「イノシン酸」の組み合わせは「うま味の相乗効果」が生まれ、単一のうま味よりも強いうま味を感じられるといわれています(注7)。 うま味が引き立つことで、素材の味をいかした味付けでもおいしく、塩分を控えめにしても満足感を得やすい点も魅力です。炊き込みご飯や味噌汁、煮物などかつお節・だしを使用する料理とさつまいもは相性がいいと言えるでしょう。
さつまいもの魅力を改めて知った上で、新物が出回る秋にさつまいも料理をぜひ日々の食生活に取り入れてみてください。
この記事の監修者
藤橋ひとみ
株式会社フードアンドヘルスラボ 代表取締役、管理栄養士。
東京大学大学院医学系研究科修了(医学博士)。すべての人が毎日の食事で 心と体のトラブルを予防・改善できる社会づくりに貢献すべく、コラム執筆、コンサルティング、レシピ開発、メディア出演など幅広く活動中。
HP:https://is-food-health-labo.com/
脚注:
注1) 農林水産省「サツマイモはどこからきたの?:農林水産省」(農林水産省)
注2) 独立行政法人農畜産業振興機構「月報 野菜情報-今月の野菜 さつまいも -2008年12月」(独立行政法人農畜産業振興機構)
注3) 農林水産省「かんしょをめぐる状況について」(農林水産省)
注4) 文部科学省「いも及びでん粉類/<いも類>/(さつまいも類)/さつまいも/塊根/皮つき/生 – 01.一般成分表-無機質-ビタミン類」(文部科学省)
注5) 消費者庁「栄養成分表示及び栄養強調表示とは」(消費者庁)
注6) 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」(厚生労働省)
注7) 国立がん研究センター東病院「うま味の活用」(国立がん研究センター東病院)
(全て参照:2024.10.8)