日本食文化の基本 “かつお節・だし”を学ぶ「おうち食育」

食育と聞くと「どうやればいいのかわからない…」と思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、そんなに難しく考える必要はなく、身近な食事のルーツを伝え、子どもと一緒においしく食べるだけでも、食育の一環となります。まずは身近な和食や和食に使われているものについて伝える食育を始めてみませんか?

1.食のレパートリーが増えた現代だからこそ、知っておきたい日本の食文化

「食育」とは食べることだけでなく、食文化を知ることも大切な要素のひとつ。まずは、食文化に大きく変化のあった戦後から現代まで、日本の食文化がどのように移り変わってきたかを見てみましょう。

第2次世界大戦後は、アメリカからの援助を受け、パンやミルクからなる学校給食が始まるなど、さまざまな取り組みが行われてきました。高度経済成長期には、「食の欧米化」と呼ばれる食事内容の変化が生じ、輸入の自由化から、海外の食材や調理方法が入ってくるようになったことも、日本の食生活が豊かになった要因のひとつです(注2)

同時に、肉類とその加工品、バター・チーズ・牛乳・卵などの動物性たんぱく源の摂取量が特に増加しています(注2)。動物性のたんぱく源は脂質を多く含むこともあり、脂質の摂取量も年々増加しています。

そして、食塩摂取量の平均値は減少傾向にはあるものの、厚生労働省が「健康日本21(第二次)」で掲げている目標量の1日8gよりも多い、1日10.1gという現状にあります(2019年現在)(注3)。これには、日本人が海外の食文化とは異なる味噌汁や蕎麦、漬物、塩魚などを食べるといった背景があるでしょう。

このように、海外の食文化の流入と日本独自の食文化が合わさり、日本の食文化も変化してきました。食のレパートリーが豊かになったからこそ、日本の歴史ある「和食」や和食に欠かせない「だし」について伝え、古くからの日本の食文化に触れる機会をつくることも「食育」につながります。

2.日本の食文化とは

日本は南北に長く、四季があるのが特徴です。季節ごとに旬の農産物や水産物が食べられるのも、日本の食文化の良いところといえるでしょう。また日本には、乾物や漬物、しょうゆ、みそといった保存食品があります。「食べ物を無駄にしない」という想いから生まれた先人たちの工夫であり、サステナブルな食文化です(注4,5)

日本には各地で愛されている郷土料理や特産物、地場野菜など、地域特有の食べ物もあります(注5)
また、甘味・酸味・塩味・苦味に加えて、日本人が発見した「うま味」も日本の食文化のひとつ(注6)。和食に欠かせないだしに使用されるかつお節やいりこ、昆布などには、このうま味がぎゅっと凝縮されています。

3.和食とは

和食は、新鮮で多様な食材を使用し、自然の美しさを表した盛り付けをする特徴があります。また、正月や田植え、収穫祭のような行事と密接な関係があるのも特徴のひとつ(注5)。「自然の尊重」という精神がある食習慣が評価されたことから、2013年(平成25年)12月に「ユネスコ無形文化遺産」に登録されました(注4)。和食は一汁三菜の献立を基本としており、栄養バランスが良いとされています(注4)
和食が健康に良いといわれる理由としては、発酵食品が豊富なことや、だしを上手に活用することで、食塩の摂りすぎを防止できることも挙げられるでしょう(注4)

4.和食に欠かせない「だし」

うま味を生かし、食材をおいしくいただく日本人の知恵や技が詰まった和食。その要は「だし」にあります(注7)

だしに使用されるかつお節や昆布にはうま味成分が含まれており、調味料の使用量を減らしても味をまとめたり、料理にコクを与えてくれたりする効果があります。たとえば、かつお節に含まれるうま味成分は、主に「イノシン酸」。だしが主役になるような「すまし汁」や「茶碗蒸し」によく使用されます(注8)

かつお節は削って使われ、だしを取ったり、料理のトッピングとしても使用される食材です。また、だしを取らずにかつお節を料理にかけるだけでも、うま味をグンとアップできます。「煮干」もかつお節と同じうま味成分を持ち、かつお節より酸味が弱く、風味の強いだしが取れます。

また、上品な味わいの「昆布」に含まれるうま味成分は、主に「グルタミン酸」、「干し椎茸」に含まれるうま味成分は、主に「グアニル酸」です(注8)

このように、一口に「だし」といっても、どの食材から取るのかで、うま味成分の種類や特徴が異なります。また、異なるうま味成分を組み合わせることでさらにおいしくなり、味に奥深さを与えてくれます。和食はこの「うま味の相乗効果」を使うため、とてもおいしくなるのです。日本のだし文化は「東のかつお節、西の昆布」と呼ばれるように地域によってよく使われる食材が異なるのも特徴です(注9)

5.まとめ

日本人の食生活は、戦後からより豊かになり選択肢も増えていきました。食が豊かになった今だからこそ、古くからある日本の食文化を伝え、子どもと一緒に味わうことも大切な食育です。かつお節などのだしを活用した和食を楽しみながら、食文化について話してみると良いでしょう。

この記事の監修者

荒井名南

管理栄養士、フードスペシャリスト、健康食育ジュニアマスター、離乳食アドバイザー

保育園での給食運営や食育指導を経て、「親子のしあわせごはん」をテーマに食育やアレルギー食に関する執筆・監修、レシピ開発などを行う。