2025/05/30
そばの世界は奥が深い!起源や郷土料理を知ろう
日本の伝統的な食材として親しまれている「そば」ですが、麺以外の調理方法で食べられていた歴史も長く、食べ方も全国各地で異なります。そばの歴史や種類、食べ方の違いに加え、全国各地の郷土料理を知れば、そばをもっと好きになるはずです。
1. 古くから愛される「そば」の歴史
そばは、そば粉を水や熱湯で練る「そば練り」や、そばの実を食べる「そば米」として古くから食べられてきました。現代と同じような、そばを麺の状態にした「そば切り」が食べられるようになったのは、江戸時代初期ごろといわれています。
寺院でふるまわれていたそば切りは、江戸の町でうどんと並んで売られるようになり、そば屋や屋台そばとして広がっていきました。江戸時代後期のそば屋の料理には、もりそばや花巻そば、天ぷらそば、かも南蛮などがあったとされています(注1,2)。
また、大晦日に食べる「年越しそば」も、江戸時代に祝膳のひとつとして食べられるようになったのがはじまりです。現代では、そばの形状にあやかって細く長く長寿を祈り、他の麺類に比べて切れやすいことから「苦労や災いを断ち切る」という意味を込めて食べるようになったといわれています(注3)。
2. 「そば」の種類
そばは、そば粉と水に、小麦粉や卵などの「つなぎ」を加える場合と、つなぎを使わずに作る場合があります。「二八(にはち)そば」とは、つなぎを2割ほど加えたそばで、「十割(とわり)そば」はつなぎを使わないそばのことです(注4,5)。
定番料理としては、つゆにつけて食べる「もりそば」や、温かいつゆをかけた「かけそば」などがあります。
また、ねぎやわさび、大根おろし、天かすなどの薬味を加えて食べることもありますが、食べ方やそば自体の風味などには、地域ごとの特色や工夫があり、多様な楽しみ方が存在します。
3. 郷土料理としても親しまれている「そば」
そばは全国各地で郷土料理としても親しまれており、各地域の気候や土壌によって、そばの風味もさまざまです。ここでは、各地のそばの特徴や食べ方をご紹介します。
・信州そば
信州そばは、長野県の代表的な郷土料理のひとつです。冷涼な気候で朝霧がかかるような高冷地であり、霜に弱いそばを霧が守ってくれることから、おいしいそばが作れるとされ、そば切りの発祥地としても知られています。つゆに大根のしぼり汁と焼き味噌を加えて食べる伊那地域の「高遠(たかとお)そば」や、鍋つゆに野菜、鶏肉などを入れて火にかけ、竹かごに入れたそばをしゃぶしゃぶのようにして食べる奈川地域の「とうじそば」など、県内でも地域によりさまざまな食べ方があります。
中でも戸隠地方の「戸隠そば」は風味やのど越しが良く、「ぼっち盛り」と呼ばれる小分けにした盛り方が特徴です(注6)。
・わんこそば
わんこそばは、岩手県で親しまれている名物そば料理です。客が持つお椀に、給仕が「じゃーんじゃん」「それ、どんどん」という掛け声とともに、つゆにくぐらせた熱いそば、ひと口分を投げ入れ、食べた杯数を競います。「ひと口分のそばの10~15杯が、一般的なかけそば約一杯分」で、満腹になったらすぐにふたをしないとまたそばが投げ入れられてしまうという、給仕と客の掛け合いも見ものです(注4,7)。
・出雲そば
出雲そばは、戸隠そばやわんこそばと並んで「日本三大そば」のひとつとしても知られている、島根県出雲地方の代表的なそばです。殻のついたそばの実をそのまま挽き込む「挽きぐるみ」という製粉方法で作られることにより、香り高く風味が良く、つなぎの小麦粉が2割程度と少ないのも特徴です。
割子という円柱状の重箱に入ったそばに、冷たいつゆをかけて食べる「割子そば」や、鍋や釜から揚げたそばをそのまま器に入れて、とろみのついたそば湯と薬味をかけてつゆを入れた「釜揚げそば」などがあります(注8,9)。
・へぎそば
新潟県魚沼地方発祥のへぎそばは、ツルツルとした食感と弾力のあるコシが魅力で、そばのつなぎに「布海苔(ふのり)」という海藻が使われている郷土料理です。
新潟には織物文化が根付いており、「へぎ」と呼ばれる四角い器に、ひと口ずつ美しく盛り付けられたそばは、織物の糸を紡ぐときの手の動作を表しているといわれています。魚沼地方では、わさびが収穫できなかったため、薬味のねぎにからしを添える風習があります(注10)。
4. そばにかかせないつゆ
そばを食べるときに欠かせない「つゆ」は、「かえし」と「だし」を別々に作って合わせる方法で作られます。かえしは醤油やみりん、砂糖を合わせて作り、だしはかつお節やさば節、宗田鰹節(そうだがつおぶし)などの特徴の異なるだし原料をブレンドして作られます(注3,11)。
めんつゆの種類の中で「そばつゆ」は、かつお節やさばの枯れ節が素材に使われているものが多く、醤油とだしの風味が強いのが特徴で、甘みが強めのものとだしが強めのものがあります(注12,13)。
ご紹介したように、そばには古くからの歴史があり、各地域でそばの風味や食べ方もさまざまです。ぜひ、訪れた先でその土地ならではのそばを味わったり、いつもと違う食べ方をご自宅で試したりして、「そば」をさらに楽しんでください。
この記事の監修者
荒井名南(あらい めいな)
管理栄養士、フードスペシャリスト、健康食育ジュニアマスター、離乳食アドバイザー
保育園での給食運営や食育指導を経て、「親子のしあわせごはん」をテーマに食育やアレルギー食に関する執筆・監修、レシピ開発などを行う。
参考文献
注1) 農林水産省「うちの郷土料理」(農林水産省)
注2) 全国学校栄養士協議会「郷土食(徳島県)」(全国学校栄養士協議会)
注3) 農林水産省「お蕎麦を知って美味しい年越しそばを食べよう!」(農林水産省)
注4) 農林水産省「穀類」(農林水産省)
注5) 農林水産省「日本全国の麺文化をご紹介! ニッポン麺探訪 第11回」(農林水産省)
注6) 農林水産省「うちの郷土料理 手打ちそば」(農林水産省)
注7) いわての文化情報大事典「わんこそば(盛岡市)」(岩手県)
注8) 農林水産省「うちの郷土料理 出雲そば」(農林水産省)
注9) 農林水産省「出雲そば」(農林水産省)
注10) 農林水産省「うちの郷土料理 へぎそば」(農林水産省)
注11) 農林水産省「節類」(農林水産省)
注12) ヤマキ「知っておきたい!そうめんの特徴とお手軽アレンジ術」(ヤマキ株式会社)
注13) TABLEVA「【レシピ付き!】余った調味料どう使う?『めんつゆ編』」(TABLEVA)
(参照:2025.04.25)