かつお節は発酵食品!?
魅力や活用術をご紹介!

数千年前も昔から、発酵食品は人間の食生活に欠かせないものとして、世界中で活用されてきました。元は保存食や、栄養価を高める目的、アルコールを醸造する目的で発酵の技術が使われていましたが、近年は、発酵食品が心身の健康に与える影響が注目されています。
また、私たち日本人の食生活も発酵食品なしでは成り立たないほどです。例えば、和食に欠かせない調味料である「料理のさしすせそ」と表現される、酢、醤油、味噌や伝統的な漬物である糠漬けやたくあん漬け、柴漬けなども発酵食品に該当します。和食を支えるだしのひとつにかつおだしがありますが、かつお節の中にも発酵食品があることをご存知でしょうか。この記事では発酵食品の基本と発酵食品としての「かつお節」の魅力をご紹介します。

1.そもそも「発酵食品」とは?

2019年に決められた発酵食品の定義は「望ましい微生物増殖と食品成分の酵素変換を通して作られた食品」というものです(注1)。簡単にいうと、製造工程で微生物の力を借りている食品ということになります。望ましいものは発酵、そうでないものは腐敗と呼び、どちらも微生物の働きである点では同じです。
日本人において摂取量が多い発酵食品を調べたところ、上位に該当するのは、ビール、コーヒー、ワイン、日本酒、などの嗜好飲料や、ヨーグルト、パン、チーズ、納豆でした。かつお節は一度に食べる量が少ないことから、摂取量の上位にはランクインしにくい特徴がありますが、数ある発酵食品の中で、調査に参加した人全員が調査期間中に1回以上食べていた食品でした。そのことからも、私たちの食生活に欠かせない発酵食品のひとつだと言えるでしょう(注2)

2.こんなにも人を惹きつける「発酵食品」の魅力とは?

発酵食品が長年愛されてきた理由はどのようなところにあるのでしょうか。その代表的な理由として、次の4つの魅力が考えられます(注1)

1:日持ちが良くなる
発酵を行う微生物が食品中に増えることで腐敗を招く菌の繁殖や侵入が抑えられ、食品の保存性が高まることが分かっています。
2:食品の栄養組成を変化する
微生物が食品成分を分解することで、消化吸収しやすくなるだけでなく栄養素(一部のビタミンや有機酸など)や生理活性物質が付加されます。
※全ての発酵食品には該当しないことがあります。

3:おいしさが増す
食品中に含まれるたんぱく質が発酵の過程でアミノ酸に分解され、元の食品よりもうま味が増強されておいしさがアップします。特にたんぱく質が豊富な乳製品や大豆を発酵させるとその影響が顕著で、チーズや納豆や味噌、醤油などが代表的な例です。
4:健康に有益である可能性が見出されている
発酵食品の中でもヨーグルトなどの発酵乳製品の摂取は、健康に有益である可能性が明らかにされつつあります。

3.かつお節も発酵食品のひとつ!?

かつお節には「荒節」と「枯節」、「本枯節」という種類がありますが、そのうち「カビ付け」の工程がある「枯節」「本枯節」は微生物の力を借りて作られる食品であることから、発酵食品の定義に該当します。
カビを付けると聞くと、びっくりする方もいらっしゃるかもしれません。かつお節は、製造工程で意図的に食べられる種類のカビを(優良カビ)付けて作られています。カビが付けて作る食品というと、青カビを付けるブルーチーズや白カビを付けるカマンベールチーズのイメージが強いかもしれませんが、「枯節」「本枯節」と言われるかつお節の製造にもカビ付けが欠かせません。

4.かつお節に「カビ付け」をするのはなぜ?

カビ付けをするのは、特有のおいしさを引き出し、より高品質なかつお節を作ることができるためです。かつお節の製造に用いられる優良カビの菌種にはさまざまなものがありますが、いずれもアスペルギルス・グラウクス群(Aspergillus glaucus)に属しています。このカビの特徴として、脂肪の分解力があり、良い香りを引き出す点が挙げられます。
脂肪は品質低下の原因となるため、カビ付けをして分解することで、焙乾香や酸味がやわらぎ、上品な風味とうま味が際立ちます。枯節はカビを付けていない「荒節」と比較してまろやかなだしが取れます。
悪性カビは、食品を腐敗させるような人体にも害のあるものです。カビ付けには悪性カビが発生するのを防ぐ効果もあります(注3)

5.「カビ付け」ってどのように行うの?

「カビ付け」の方法には、昔ながらの伝統的な方法と、現在主に行われている近代的な方法があります。昔は裸節(カビが付きやすいよう荒節の表面を削り、形を整えたもの)を木の箱に入れて自然にカビが付くのを待っていましたが、今では優良カビの胞子を噴霧することがほとんどです。
この工程は時間と手間がかかるもので、裸節の表面にカビを付けた後、10〜15日寝かせ、一度取り出して乾かし、再度カビ付けを行います。カビ付けを2回以上行ったものが「枯節」、カビ付け・乾燥の工程をさらに繰り返し、熟成させたものが「本枯節」です。「本枯節」ができるまでは最低で2〜3ヶ月、通常は半年以上もの期間を要します(注3,4)

6.手軽に摂れる発酵食品「かつお節」をこれからの食卓に!

今回は、発酵食品の魅力やかつお節の製造方法についてご紹介しましたがいかがでしたでしょうか。発酵食品のひとつであるかつお節(枯節・本枯節)をご飯に、おかずに、汁物に、さまざまな料理にちょい足しして、手軽に発酵食品を摂取してはいかがでしょうか?最後に発酵食品を活用したレシピをご紹介するので、ぜひお試しください!
※こちらのレシピページに掲載されている商品の中には「荒節」のものがありますが、発酵食品を意識される場合には、商品のパッケージの原材料名をご確認いただき「かつおのかれぶし」と表記されているもの(枯節)に置き換えて作ってみてください。

この記事の監修者

藤橋ひとみ

株式会社フードアンドヘルスラボ 代表取締役、管理栄養士。

東京大学大学院医学系研究科修了(医学博士)。すべての人が毎日の食事で 心と体のトラブルを予防・改善できる社会づくりに貢献すべく、コラム執筆、コンサルティング、レシピ開発、メディア出演など幅広く活動中。
HP:https://is-food-health-labo.com/