じゃがいもの品種ごとの使い分けと保存方法

じゃがいもには何種類の品種があるか、ご存知でしょうか。一般的に、男爵薯(だんしゃくいも)やメークインがスーパーに並んでいますが、近年ではさまざまな品種が流通するようになりました。品種ごとに色や形、大きさ、風味と特徴が異なるため、その特徴を生かした活用法を知ると、日々の食卓がより楽しいものになるでしょう。また、じゃがいもを安全に食べるためには、保存方法がとても大切です。今回は、主役でも脇役でも活躍してくれる万能食材「じゃがいも」の知識を深め、よりおいしく楽しめるレシピをご紹介します。

1.じゃがいもの基礎知識:歴史・品種

じゃがいもの原産地は、南米のアンデス山脈とされており、現地では乾燥させたものを保存食として利用したようです。日本には17世紀に、ジャカルタ(現在のインドネシア)の港を経て持ち込まれたため、「じゃがいも」と呼ばれるようになったという説があります。また、「じゃがいも」は「馬鈴薯(ばれいしょ)」ともいいますが、これは「マレーいも」が転じてそう呼ばれるようになったという説もあります (注1)

<じゃがいも品種とその特徴>
農林水産省に登録されているじゃがいもの品種は、130種以上もあります(注1)。ここでは、その中から主な品種をご紹介します。

●男爵薯(だんしゃくいも)
栽培を試作させた川田龍吉男爵が名前の由来で、明治41年に栽培され始めたといわれています。
特徴:最も生産量が多く、形は丸みを帯びた形状。目が深めで皮は黄褐色、果肉は白。
料理:やや粉っぽく、ほくほくした肉質で、ポテトサラダやコロッケなどにピッタリです(注1,2,3)

● メークイン
村祭り(メーデー)の女王が名前の由来で、大正2年以前にイギリスから導入された品種です。北海道の十勝・檜山地方が主な産地となっています。
特徴:細長い楕円形で、根本の部分がやや膨らみ少し曲がった形状。果肉は薄い黄色で、やや粘質。目は浅め。煮崩れしにくく、煮物が多い関西方面で人気。
料理:肉じゃが、シチューなどの煮込み料理、カレーに向いています(注1,2,3)

●キタアカリ
男爵薯と病気に強い品種を合わせ、北海道農業試験場が交配・育成、1987(昭和62)年に北海道の優良品種に認定されました。「北」の産地に希望の「明かり」がさすようにと名付けられました。
特徴:男爵薯に似た丸みのある形状で、表面は男爵薯より粗い。皮色は黄色で目の部分に赤紫色の着色があり、果肉は濃い黄色で香りが良い。
料理:火の通りが早く、男爵薯よりやや煮崩れしやすいため、電子レンジでの調理に向きます。皮付つきのふかしいもやポテトサラダ、コロッケにピッタリです(注2,3,4,5)

●とうや
北海道農業試験場で育成され、1995年に品種登録されました。果⾁が⻩⾊く、気品のある味わいであることから、「⻩爵(とうや)」と名付けられました。
特徴:大粒で球形。目が浅く表面のくぼみが少ないのが特徴で、⽪向きがしやすく、煮崩れしにくい。果肉は黄色でデンプン価が低いため粉っぽさがなく、滑らかな⾆触りを楽しめる。
料理:煮崩れしにくいため、カレーや⾁じゃがなどの煮込み料理や滑らかな⾆触りを生かせるサラダに向いています(注2,3,4,6)

●ニシユタカ
九州ではじゃがいも作付面積の半数を占める主力品種。長崎県や鹿児島県を中心に温かい地域で栽培されています。
特徴:やや扁平な丸みを帯びた形状。目が浅く、均一な形状で皮は淡いベージュ、果肉は淡い黄色でやや粘質。
料理:カレーや肉じゃがなどの煮込み料理に向いています(注1,3,4)

●インカのめざめ
原産地の南米アンデス地域で高級食材として取引されている品種を日本でも栽培できるよう品種改良したもの。専用の冷蔵倉庫で低温貯蔵され、甘みが増してから出荷されます。
特徴:小ぶりで卵型。目が浅く、皮は黄褐色~濃い茶色。果肉は橙色に近い濃い黄色で濃厚な甘さと栗のような風味が持ち味。
料理:丸ごと茹でたり、揚げたりして食べるのもおすすめです。甘さを生かしてお菓子づくりにも活用できます(注3,7,8)

2.じゃがいもの選び方と保存方法

<買うときのポイント>
天然毒素であるソラニンなどのステロイドアルカロイド配糖体が含まれるので、芽が出ていたり、皮に緑色の部分があるじゃがいもは避けるようにしましょう。購入後は長期間保存せず、なるべく新鮮なうちに食べることが大切です。家庭での長期間の保存を避けるため、じゃがいもはその都度必要な量を購入するよう気をつけましょう(注9,10)

<基本的な保存方法>
保存する場合は、芽の出やすい環境(高温、明所) に放置せず、暗くて涼しい場所に保管しましょう。20℃以上になると発芽、腐敗しやすくなるため、10℃くらいの涼しい場所が好ましいです。
暗くて涼しい場所に置けば、必ずしも冷蔵庫で保存する必要はありません。かごや穴をあけたポリ袋に入れて、通気性の良い場所で保存すると良いでしょう。保存中に芽が出た場合、芽の付け根の硬くなった部分にはソラニンが多く含まれるので、確実にとり除くようにしてください(注9,10)

<冷蔵庫(野菜室)で保存する際の注意点>
じゃがいもを冷蔵すると、糖の濃度が高くなり、揚げたり炒めたりしたときにアクリルアミド(※)という有害物質のできる量が増える可能性があります。夏場を除いて冷蔵庫で保存する必要はありませんが、基本的には暗くて涼しい場所(10℃くらい)に保管しましょう。冷蔵保存したじゃがいもは、煮物や蒸し物といった水を使った調理に使えば、アクリルアミドができにくく、甘みも増しておいしくいただけます(注9,10)
※食品に含まれる、加熱により糖とアミノ酸の一部が反応してできる有害物質

<カットしたじゃがいもの保存方法>
カットしたじゃがいもは冷凍保存をするのがおすすめです。キッチンペーパーで、はさんで軽く叩くようにして余分な水気をふき取り、冷凍保存袋に入れ、できるだけ空気を抜いて口を閉じたら厚みを平らにならします。アルミのバットなどの金属トレーに乗せて保存します。冷凍保存期間は3週間が目安です。そして調理の際は、解凍せず、凍ったまま料理に使うのがおすすめです。冷凍すると野菜の細胞が破壊され、解凍したときに水分が溶けて流れ出します。この特徴を生かして、凍ったまま沸騰した煮汁に加えて煮込むと、味のしみた煮物やシチューなどを手軽に作ることができます(注11)

3.主役でも脇役でも大活躍!じゃがいもの栄養と活用法

<じゃがいもに含まれる栄養素の特徴>
主成分が炭水化物なので、主食にする国もあります。また、じゃがいもはビタミンCが豊富で、ビタミンCは熱に弱い性質がありますが、じゃがいもの場合はデンプンに守られているため、壊れにくいという特徴もあります。生活習慣病予防のために積極的に摂りたい栄養素、食物繊維やカリウムが豊富なのもうれしい特徴です(注1,12)

<可能性は無限大!じゃがいもの活用法>

じゃがいもは和洋中さまざまなジャンルの料理に使える万能食材です。主役にも脇役にもなる優れもので、さまざまな食材と相性が良く、組み合わせも幅広く料理に使えます。
男爵薯やキタアカリのように潰しやすい品種はポテトサラダやコロッケに、メークインやとうや、ニシユタカのように煮崩れしにくい品種はカレーやシチュー、煮物などの煮込み料理に活用するなど、品種の特徴に合わせて料理に使えるとより一層じゃがいも料理を楽しむことができます。

ここでおすすめしたいのが、かつお節と組み合わせること。じゃがいもの甘み、うま味とかつお節のうま味が合わさると絶品料理が作れます。肉じゃが、コロッケ、ポテトサラダ、カレーやシチューといった代表的なじゃがいも料理にかつお節を加えると、かつお節に含まれるイノシン酸が、じゃがいもに含まれるグルタミン酸と合わさり、相乗効果でうま味がより一層強く感じられます。いつも作っているじゃがいも料理に、かつお節をサッとかけるだけでおいしくなる「うま味の掛け合わせ」をぜひ試してみてください。かつおだしを使った煮込み料理もおすすめです(注12,13)

じゃがいもにはたくさんの種類があり、特徴もさまざまです。保存方法に注意しながら、料理に合わせて品種を選んでさらにじゃがいも料理を楽しんでみてはいかがでしょうか。かつお節と組み合わせて料理をすると、じゃがいものおいしさをさらに引き出してくれます。ぜひさまざまな料理にチャレンジしてみてください。

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この記事の監修者

藤橋ひとみ

株式会社フードアンドヘルスラボ 代表取締役、管理栄養士。

東京大学大学院医学系研究科修了(医学博士)。すべての人が毎日の食事で 心と体のトラブルを予防・改善できる社会づくりに貢献すべく、コラム執筆、コンサルティング、レシピ開発、メディア出演など幅広く活動中。

HP:https://is-food-health-labo.com/

参考文献
注1) 農林水産省「aff 2017年11月号, 特集 じゃがいも さつまいも」(農林水産省)
注2) 農林水産省「こどもページ, 農産物博士になろう, じゃがいものいろいろな種類」(農林水産省)
注3) 日本いも類研究会「じゃがいも情報, じゃがいも品種解説」(日本いも類研究会)
注4) 独立行政法人農畜産業振興機構「ばれいしょの需要変化と品種の動向」(農畜産業振興機構)
注5) 北海道産青果物拡販宣伝協議会「きたやさい百科, ばれいしょ(キタアカリ)」(北海道産青果物拡販宣伝協議会)
注6) JAきたみらい「農産物紹介, じゃがいも, 黄爵(とうや)」(JAきたみらい)
注7) 北海道農政事務所「ばれいしょ『インカのめざめ』の収穫」(北海道農政事務所)
注8) 農研機構「ばれいしょ『インカのめざめ』品種紹介パンフレット」(農研機構)
注9) 厚生労働省「自然毒のリスクプロファイル:高等植物:じゃがいも」(厚生労働省)
注10) 農林水産省「じゃがいもによる食中毒を予防するために」(農林水産省)
注11) 農林水産省「簡単な『冷凍ワザ』で、野菜を新鮮に!おいしく!」(農林水産省)
注12) 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年, いも及びでん粉類/<いも類>/じゃがいも/塊茎/皮なし/生」(文部科学省)
注13) ヤマキ株式会社「かつお節をかけるだけ!うま味の掛け合わせで、もっとおいしく!」(ヤマキ株式会社)
(参照:2025.01.06)