特別な「ハレの日」と、日常の「ケの日」。
伝統的な考え方を知り、日本の文化を食卓へ

日本では古来より、お正月や節分といった年中行事や、成人式や卒業式など人生の節目にあたる日を「ハレの日」と呼び、特別な日としてきました。そして、それ以外の日常を「ケの日」と呼び、日々の食事と行事食とにメリハリをつけることで季節を楽しんでいます。この記事では、「ハレの日」と「ケの日」に焦点を当て、行事食の文化や日本食の特徴、かつお節やかつおだしを活用したおすすめレシピをご紹介します。日々の食卓で簡単に生かせるものも多いので、ぜひ食卓へ、日本の文化を取り入れてみてください。

1.ハレの日、ケの日とは?

ハレの日は、日常生活とは違った「特別な日」のこと。もともとは、成人式、卒業式、お食い初め、還暦の祝いといった人生の節目にあたる「人生儀礼」や、正月、節分、花見、大晦日、五節句などの「年中行事」を指す言葉でした (注1)

<人生儀礼>

・誕生~幼少期:
生後100日頃に行う「お食い初め」や「七五三」、入学、進級など(注2)
・成人後:
「成人式」や「葬儀」など(注1)
・年祝い:
「還暦」「古希」「米寿」など、長寿を祝うもの(注1)

<五節句>

・人日(じんじつ):
1月7日。無病を願う行事。「人を占う日」として、中国の年中行事を記した書物に記されています(注1)
・上巳(じょうし):
3月3日。一般的に「ひな祭り」や「桃の節句」と呼ばれます。平安時代に「ケガレ」を人形に移して水に流す行事が生まれ、ひな祭りの原型となりました(注1)
・端午(たんご):
5月5日。一般的に「こどもの日」や「菖蒲の節句」と呼ばれます。5月は田植えの時期であることから、豊穣を祈るという意味もあります(注1)
・七夕(たなばた):
7月7日。「織姫と彦星の伝説」や日本の古くからの信仰になぞらえて「水辺で神に人々のけがれを持ち去ってもらう」という行事です(注1)
・重陽(ちょうよう):
9月9日。「陽の数(奇数)」の最大数である「九」が重なるめでたい日と言われています(注1)

これに対して、ケの日は「日常の生活」のことを指します(注3)。6~7世紀に稲作がはじまったことにより、主食となる「ごはん」におかずを添えるという、ケの日の食事の基本の形が発達したといわれています(注4)

2.ハレの日、ケの日の食事

ハレの日には、特別な料理を食べる習慣があります。ここでは、先ほど紹介した年中行事や五節句、人生儀礼に食べる料理をご紹介します。

・七草粥:
人日(1月7日)に「新年にあたり生命力が強い野草を食べると長生きができる」という考えから「七草粥」が食べられます。正月の豪華な食事で疲れたお腹を休める意味もあるとされます(注1)
・小豆粥:
小正月(1月15日)に、邪気を払うといわれる「小豆」を入れた「小豆粥」を家族で食べ、一年の健康を願います(注2)

・恵方巻き:
節分(2月3日)には、その年の歳神様がいる方向である「恵方」を向いて「恵方巻き」を食べる習慣があります。恵方を向いて、願い事を思い浮かべながら無言で一気に太巻きを丸かじりするという食べ方には、「商売繁盛」や「幸せを一気にいただく」という意味が込められています(注5)

・はまぐりの潮汁:
ひな祭り(3月3日)に食べられる。はまぐりは「対になっている貝がら同士でないとぴったり合わない」ということから、「女の子が将来よい相手と出会えますように」という願いが込められています(注2)

・柏餅:
端午(5月5日)に男の子の健やかな成長を祈る意味で食べられます。柏の葉は新芽が出るまで親の葉が枯れ落ちないことから、代々継承を願う意味もあります(注1)

・そうめん:
七夕(7月7日)にはそうめんが食べられます。疫病を免れるとされていた、小麦粉を練ってひも状にし、油で揚げた唐菓子である「索餅(さくべい)」が原型といわれています(注1)
・食用菊料理:
重陽(9月9日)には、よい香りで気品が高く、邪気をはらい寿命を延ばす不老不死の薬と考えられていた「菊」を用いて、不老長寿を祈ります(注1)
・千歳飴:
七五三には、健康と長寿を願う「千歳飴」を子どもに持たせます。麦芽から作った細長い飴を縁起の良い紅白に染めたものがはじまりとされています(注2)

ハレの日に特別な料理を食べるのに対し、ケの日は日常の食事です。江戸時代には、ごはんを中心に、汁物、おかず、漬物を配膳するという形式が定着。時代が経つにつれて食品の選択幅が広がり、コロッケやとんかつといった洋風のおかずも日常食として食べられるようになりました。戦後は中華風など、さまざまな国の料理が食卓に並ぶようになり、現代の多様な食生活につながっています(注4)

そんなケの日の食卓も、うま味が豊富な「だし」「みそ」「しょうゆ」といった調味料と、「煮る」「蒸す」「焼く」「和える」「揚げる」など、和食の特徴である多様な調理法を組み合わせれば、素材のおいしさを、ぐっと引き出すことができるでしょう(注6)

3.ハレの日、ケの日どちらにもかつお節を

「和食」は、ハレの日、ケの日、どちらの食事にもよく用いられます。そして、この和食の味わいの中でも、重要な要となるのが「だし」です。そして、だしの濃厚な味わいのひとつとなる「かつお節」も、和食には欠かせません(注6)

だしやかつお節を用いれば、ハレの日の特別な料理は、ワンランク上の味わいに。素材を生かしたいケの日の素朴な料理を、より味わい深くすることができます。どんな日の料理にも、簡単にうま味をプラスできるので、賢く活用してみてください。