多彩な日本各地のおでん。
地方ごとの味わいの違いをご紹介!

寒い季節といえば、「おでん」がおいしいですね。だし汁の風味がしっかり染み込んだ具材を味わうと、心も体も温まります。この風味豊かなおでんは、日本全国で親しまれていますが、地域によってだし汁や具材が異なることをご存知でしょうか。
この記事では、おでんの起源や地域ごとの種類、だし割りの楽しみ方についてご紹介します。

1.おでんについて

おでんの起源は「豆腐田楽」と言われています。串刺しの豆腐に味噌を塗って焼いたこの料理は、室町時代に誕生しました(注1)。おでんという言葉は、宮中などに仕える女性たちが使用した言葉で、「田楽」に「お」をつけて丁寧に表現し、「楽」を省略して「おでん」と呼んでいたとされています。その後、明治時代には汁気の多いおでんが登場し、大正時代には関西で広まりました。各地域で独自の具材と味付けが生まれ、家庭でも親しまれる料理となりました(注2)

2.日本各地のおでんの特徴

おでんは、各地の食材や文化が色濃く反映されています。地域のおでんを一部、ご紹介します。

【東北】
しょうが味噌おでん (青森県)

青森県青森市周辺では、おでんにしょうがをすりおろした味噌ダレをつけて食べるのが一般的です。この食べ方は、戦後の闇市の屋台でおかみさんがおでんにしょうが入りの味噌をかけて出したのが始まりと言われています。おでんの具材も特徴的で、陸奥湾の名産であるツブ貝や、ぼたん焼きちくわ、薄くて大きなさつま揚げである「大角天」、そして根曲がりだけ(たけのこ)などが使われます(注3)

【関東】
おでん(東京都)

昆布とかつお節から取っただしをベースに、何種類もの具材を醤油などの調味料で煮込んで作られます。具材には、大根、じゃがいも、卵、しらたき、油揚げ、はんぺん、がんもなどを使用し、特に東京では、小麦粉と塩から作られる練り物「ちくわぶ」を入れるのが特徴です。お好みに合わせてからしを添えて食べます(注4)

おでん(静岡県)

静岡市の郷土料理、静岡おでんは、醤油などで下ごしらえした牛すじの煮汁とかつおだしをベースとした濃厚な黒いつゆが特徴です。始まりは大正時代ですが、第二次大戦後には廃棄処分されていた牛すじや豚モツを入れると人気が高まりました。また、駿河湾から取れる新鮮な魚介類を使用した、黒はんぺんなどが使われます。牛すじ、黒はんぺん、大根、卵などの具材はすべて串に刺され、最後には青のりや魚のだし粉をふりかけて食べます。地元では駄菓子屋でも販売され、幅広い年齢層に親しまれているようです(注5)

こんにゃくのみそおでん(埼玉県)

埼玉県の寄居町風布地区、秩父地域の伝統おでんには、具がシンプルな「こんにゃくみそおでん」があります。特産の「こんにゃく」を三角形に切って串に刺し、沸騰した湯で温め、水気を切った後、甘めの味噌ダレにつけて食べます。味噌ダレには、砂糖、ざらめ、日本酒などが加えられ、さらにすりつぶしたごま、ゆず、みかんの皮などを加えることもあります(注6)

【中部】
味噌おでん(愛知県)

愛知県の食文化には、八丁味噌に代表される豆味噌(赤味噌)が欠かせません。愛知県ならではの「味噌おでん」は、土鍋で大根、卵、こんにゃく、焼き豆腐などの具材をだし汁で煮込み、具材が入った土鍋の中央に味噌壺を置き、具材を味噌ダレにつけて楽しむスタイルです。しかし、近年では、だし汁に味噌を加え、具材と一緒に煮込むスタイルも広まっています(注7)

【関西】
姫路おでん(兵庫県)

姫路おでんは、生姜醤油をかけたり、つけて食べたりすることが特徴です。具材には牛すじ、大根、昆布、卵、ちくわ、こんにゃくなどが使われ、だし汁と醤油、みりんを合わせたおでんだしで1時間ほど煮込んで作られます。姫路には甘い関東煮と薄味のおでんの2つのスタイルがあり、いずれも生姜醤油を使うと「姫路おでん」と呼ばれます(注8)

3.食べるだけじゃない!おでんの他の楽しみ方

おでんは、「だし割り」という方法で味わうこともできます。「だし割り」とは、日本酒をおでんのだしで割った飲み物です。
日本酒は甘味、酸味、苦味、うま味の4つを持っており、唯一塩味が不足しています(注9)。一方、おでんには塩味の他に、かつお節や昆布から抽出されるだしにはうま味成分である「イノシン酸」や「グルタミン酸」、また干ししいたけなどを使用しただし汁には「グアニル酸」が含まれています。
だしを加えることで塩味やこれらの異なるうま味成分が相互に影響し合い、より深みのあるおいしさが引き出されます。

・だし割りのおいしい楽しみ方
だし割りは、日本酒、おでんのだし汁、七味唐辛子で作ることができます。日本酒とおでん汁を1:2〜3程度の比率で混ぜて作りますが、お好みの割り方でお楽しみください。
尚、日本酒は温めた燗酒(かんざけ)がおすすめです。だし汁が冷めないように、日本酒の温度を40〜50℃(ぬる燗から上燗、熱燗)程度に調整するのがポイントです。
また、お酒の選び方も大切です。だし割りには、うま味が豊かな純米酒や、口当たりがすっきりとした本醸造酒が、おでんとの相性が良いとされています。

4.まとめ

おでんは、青森、東京、静岡など、各地にご当地おでんが存在します。最近では、ブロッコリーやトマトなどが新たな具材として加わったおでんや、夏季に楽しむ冷やしおでんなども登場しています。おでんの多様化が進む中でも、地域ごとの伝統を大切にしながら、旅行の際にはその土地ならではのおでんを探求してみてはいかがでしょうか。