子どもの味覚を育てよう!味覚の発達とうま味の関係

10歳頃までの味の記憶は、その後の味覚の基礎になるともいわれています。
さまざまな味を経験して、食材本来の味に対する感受性を高める環境づくりが大切です。
味覚の発達や、濃い味と味覚の関係、味覚の発達に大切なうま味についてご紹介します。

1.味覚とは、基本の5味とその役割

私たちは普段食事をする中で、いろいろな味を感じており、この感覚が「味覚」です。味覚は、「甘味」「塩味」「酸味」「苦味」「うま味」の5つの基本味で構成されています。

5つの基本味は、「体に必要なものを教えてくれる味」と「体に危険なものを教えてくれる味」に分けられます。「体に必要なものを教えてくれる味」は「甘味」「塩味」「うま味」で、人が本能的に好む味といわれています。一方「体に危険なものを教えてくれる味」は「酸味」と「苦味」で、これらは人が本能的に避ける味といわれています。

また、これら5つの基本味には、それぞれ役割もあります。

甘味:エネルギー源となる糖の存在を教える役割
塩味:ミネラルの存在を教える役割
うま味:たんぱく質の存在を教える役割
酸味:腐敗していることを教える役割
苦味:毒があるかもしれないと教える役割

2.味覚はどうやって発達していくの?

味覚は口内や舌の表面にある「味蕾(みらい)」という器官で感じ取っていて、その機能は生まれた時が最も敏感です。数も乳児期が最も多く、約1万個あるといわれています。つまり、赤ちゃんは味に敏感ということです。その後味蕾の数は加齢と共に減少し、成人になると7500個ほどになるといわれています。

生後5~6カ月になり離乳食が始まると、赤ちゃんは離乳食を通じてさまざまな味を知っていきます。その際、味だけでなく舌ざわりや食感、見た目や匂い、温度など五感をフルに使って食べ物を感じ、おいしさを学んでいきます。

食経験を重ねさまざまな味を知り、食べられる味が広がっていくことで味覚は発達していきます。味覚の発達のピークは3~4歳と考えられており、10歳頃までの味の記憶がその後の味覚の基礎になるともいわれています。そのため、子どものうちにたくさんの味を経験し、味覚の幅を広げておくことが味覚の発達につながります。

3.濃い味と味覚の関係

食生活が豊かになった現代では、小さい頃からさまざまな食品や味を経験する機会が増えた一方、濃い味の食品に出会う機会も増えてきています。

小さい頃から日常的に濃い味付けのものに慣れてしまうと、食材本来の味や薄味の料理がおいしく感じられなくなり、濃い味のものばかりを好むようになってしまいます。

濃い味付けが当たり前になると、知らず知らずのうちに塩分や糖分を摂り過ぎてしまい、生活習慣病になるリスクも高まります。そうならないためにも、特に乳幼児期は薄味を心がけましょう。

4.子どもの味覚の発達に大切なうま味

味覚の発達には、食べ物を口に入れ「どんな味がするのか」「風味や後味はどうか」と感じ、考えることも大切です。そのためには、子ども自身が食材本来の味を感じ取れるようにすることが大事です。

そこで重要なのが「うま味」。うま味はそれだけでもおいしさを感じますが、他の食材のおいしさも引き立たせてくれます。

うま味を上手に使い、食材本来の味に対する感受性を高め、子どもの味覚を育てていきましょう。

5.うま味たっぷり!かつお節がおすすめ

うま味が多い食材の中でおすすめなのが「かつお節」です。かつお節にはうま味成分であるイノシン酸が豊富に含まれていて、香りやコクもぎゅっと詰まっています。

また、かつお節は離乳食中期以降から食べることができます。かつおだしは天然素材から取っており、食塩も使用していないので離乳期から使用できます。赤ちゃんから大人まで家族全員で楽しめるところもかつお節の魅力の一つです。

かつお節はごはんやうどん、肉や野菜といったさまざまな食材との相性も抜群です。
かつお節を日々の食事に取り入れて、豊かな味覚を育てていきませんか。

この記事の監修者

野口友美

管理栄養士

保育園栄養士として園児への食育、給食業務全般を経験。その後、食品会社にて商品に関する相談および栄養相談業務、流動食専用ダイヤルの新規立ち上げを担当。その後、フリーランスとして独立し、食や栄養に関するコラムの執筆、行政での栄養相談、料理教室講師、食育ワークショップ講師、レシピ開発、などを行っている。

【参考文献】
・渡部文子『味覚による快・不快情動の制御機構』(日本味と匂学会誌、2017年)

・山崎英恵(編集)、津田謹輔,伏木亨,本田佳子(監修)「Visual栄養学テキスト『食べ物と健康Ⅳ.調理学』」(中山書店、2018年)

・加藤初枝『好き嫌いをなくす幼児食』(女子栄養大学出版部、2002年)