一月は睦月といいます。
「睦月」とは「睦み月(むつみつき)」であり、新年を家族などの親しい人々とむつみあう、という意味が込められています。
さて、その新年といえば、お正月です。この正月は、数ある年中行事のなかでももっとも古くから存在するもので、日本に仏教が伝来した6世紀半ばにはもうあったと言われています。
一説によれば、室町中期に著された類書『壒嚢鈔(あいのうしょう)』に、「政治に専念したことで知られる秦の始皇帝が降誕した月をセイグヮツ(政月)と言っていたものが正月と書かれるようになり、シャウグヮツと改められた」とあることから、これが語源であるとも言われていますが、実際のところはまだはっきりわかっていません。
いずれにせよ、行事としての正月は、新たなる年のはじめに歳神様を迎え、その年の豊作と家族の無事を祈る「神祭り」に由来します。新しい年を“迎える”と表現したり、門松やしめ飾りや鏡餅などを飾ったりといった風習も、歳神様を元旦にお迎えするからで、そもそも「明けましておめでとうございます」という言葉自体も、
年の明けに歳神様を迎える祝福の言葉としてひろまったものなのです。
古来、日本において、人は死ねばその魂がこの世とは別の世界へ行き、
その後「祖霊」という大きな集団、いわゆる「ご先祖様」になると信じられていました。
この祖霊が春になると「田の神」に、秋が終わると山へ帰って「山の神」に、
そして正月には「歳神」となり、子孫の繁栄を見守ってくれるのだと伝えられています。
お正月には、このような歳神様を無事に迎えることができたことに対する
心からの喜びがあらわれているのですね。
お正月を彩る料理といえば、やっぱりおせち料理です。「おせち」は「御節供(おせちく、おせつく)」が略されたもので、諸説ありますが、宮廷にて元旦や五節句*の宮中行事としておこなわれていた「節会(せちえ)」で神様に供えられていた料理を「節供(せちく、せっく)」と言ったことから広まったと考えられています。
もともと節供は暦上の「節句」のことであり、このことから、伝統的な年中行事をおこなう季節の節目となる節句の日に供される料理はすべておせち料理と呼ばれるべきなのですが、江戸時代以降に五節句の一番目にあたる正月の料理のみを表す言葉として使われるようになりました。
現在では重箱に詰めて出されるおせち料理ですが、料理のすべて、また、重箱自体にもそれぞれ意味があります。
代表的なのは、
黒豆:一年中「まめ(まじめ)」に働き「まめ(健康的)」に暮らせるように
数の子:たくさんの卵があるというところから、子孫繁栄の願い
昆布巻き:「よろ“こぶ”」 の語呂合わせ
重箱:“めでたさを重ねる”という意味の縁起かつぎ
などで、地方や家庭によって詰められる料理は多少ことなるものの、新年を祝うにふさわしい意味づけがそれぞれなされているのが印象的ですね。
なお、おせち料理に日持ちする献立が多い理由には、正月の三が日ぐらいは主婦に家事から解放されてもらうために保存の効く食材が中心になったと言われているほか、お正月に火を使うことをできるだけ避けるという、物忌みの意味もありますよ。
*五節句:1年に5回ある季節の節目の日(節日)のことで、1月7日(人日)、3月3日(上巳)、5月5日(端午)、7月7日(七夕)、9月9日(重陽)を指す。
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