「天草市牛深(うしぶか)町」では、
宗田鰹節・さば節・むろあじ節・うるめいわし煮干が、
「長崎市磯道町」ではあご煮干が作られています。
豊かな自然に育まれた魚を、職人たちの熟練の技で
節、煮干に作り上げるストーリーをご紹介します。
撮影・取材協力・写真提供:株式会社丸西、有限会社池井水産
撮影・取材協力・写真提供:株式会社丸西、有限会社池井水産
いい節になれるかどうか。節づくりのプロフェッショナルは、原料となる魚を目利きする段階で、すでに完成した節が見えるといいます。港に水揚げされた魚の皮をめくり、目利きの職人が鮮度と脂のノリ具合をチェック。
一般的に「脂がのっている=おいしい」と思われがちですが、節はその逆なんです。それは魚に脂が多く含まれていると、せっかくの美しいだしが濁ってしまうから。だからこそ、身が締まって脂が少ない魚を選びます。
クッ、クッと全身を使ってリズミカルに。頭と内臓がベテラン職人の手によって、
2秒に1匹というスピードで取り除かれていきます。指にはかぎ爪のような「専用のフック」。これを魚の喉もとに引っ掛けて、ひとひねり。魚の大きさは1匹ずつ違うため、機械まかせにはできません。蒸篭を前後に揺らし、紙すきのような動作で身が重ならないよう素早く並べたら、20段ずつ手作業で積み重ねていきます。
1つの蒸篭には約50尾。かなりの力仕事です。
シューシューと湯気が立ち上るなか、海水を沸かした煮釜の中へ。グラグラ沸騰させすぎると、大きな気泡で身を傷めてしまうため93℃前後をキープ。魚種や大きさを見極めながら、30~40分かけてじっくり煮上げていきます。すると余分な脂が抜けてすっきり。釜揚げした後は、しばらく自然の風にさらして粗熱を取り、身をキュッと引き締めます。長年の経験によって割り出された温度と時間が、おいしい節づくりを支えているのです。
シュッ。マッチをすって薪窯に火を灯し、ここから立ち上る100~120℃の熱と煙を まとわせ乾燥させます。一気に乾燥させると魚の身に水分が残ってしまうため、急がず、ゆっくりと。焙乾→あん蒸(節を休ませること)→焙乾→あん蒸を12時間ずつ、 2、3日繰り返しながらうま味をぎゅっと凝縮させるのです。その日の気温や湿度などを見極めながら、夜間も絶えず火を灯し続けている職人の額には汗がきらりと光ります。最後に「急造庫」とよばれる別の部屋に移され、仕上げの香り付け。
きれいに削れて、おいしいだしがとれる上質な節を選んでいきます。
目安の1つが、身が締まって、背骨がくっきり浮き出ているかどうか。その姿はまるで、鍛え上げられたアスリートのように美しいフォルムです。1尾1尾、ひれを手作業で取り除いたら大きさごとに選別。できたての品質を保つため、-6℃の冷凍庫で保管しながら旅立ちを待ちます。